先日、立花孝志氏が逮捕されたという報道がありました。政治家としての立場を利用し、SNSを通じて誤った情報を流し続けてきたことが問題視されてきましたが、厳正な刑事手続きを受け、法の下で適切に処理されることは、健全な民主主義にとって不可欠だと考えます。率直に言えば、「逮捕されて良かった」と感じています。なぜなら、この問題は一人の政治家の行為にとどまらず、SNS時代の社会全体が抱える深刻な課題を象徴していると思うからです。
■ 嘘が“瞬時に広がる”社会の危うさ
いま私たちが生きる社会では、真実よりも“刺激的な嘘”のほうが速く、遠くまで広がる現実があります。SNSのアルゴリズムは、過激な言葉や対立を助長する投稿ほど露出を増やす仕組みになっており、誤情報が一気に拡散されてしまいます。
その結果、社会の分断が深まり、人々の不信感が増し、政治不信さえ助長される。これこそが、私が最も危惧する点です。
立花氏の発信には、誇張された情報や根拠の薄い主張が繰り返し含まれてきました。影響力のある立場の人物がこうした行動をとる場合、もはや個人の問題ではなく「社会に対する加害」になり得ます。
■ SNSの嘘を“ゼロ”にはできない現実
私は、SNS上の嘘や誤情報を完全になくすことは難しいと感じています。なぜなら、SNSは誰もが瞬時に情報を発信でき、事実確認が追いつく前に何万、何十万という人に届いてしまうからです。
しかし、「ゼロにできない」からといって放置してよい問題ではありません。嘘が蔓延する社会では、政治も、政策も、そして民主主義そのものも機能しなくってしまいます。だからこそ、政治が果たすべき責任があると考えます。
■ 政治は何をすべきか ― 3つの柱
① 情報発信の透明性と説明責任の徹底
政治家自身の発言が誤情報の温床にならないよう、事実確認を徹底することは当然の責任です。
また、政策を説明する際も、誤解を招かない丁寧さが求められます。政治家の言葉は影響力が大きく、誤った情報が広がれば社会的な損害は計り知れません。
② 市民の情報リテラシー教育の推進
政治だけの努力では誤情報は止められません。
受け手である市民に「真偽を見極める力」が育つよう、学校教育や社会教育での情報リテラシー向上は欠かせません。
・情報源を確かめる
・異なる立場の意見に触れる
・感情に流されず判断する
こうした基本的な技術は、現代を生きるすべての人に必要ではないでしょうか?
③ プラットフォームに対する制度的な働きかけ
SNS事業者に対し、悪質な誤情報・中傷投稿への対策を強化するよう政策的に働きかけることも必要です。
言論の自由は守られなければなりませんが、同時に社会を守るための一定のルールづくりは欠かせません。
■ 受け手としての私たちの姿勢も問われている
政治家としての問題だけでなく、市民一人ひとりも、情報の受け手として主体的な姿勢が求められます。
「この情報は本当か?」
「誰が得をするのか?」
「これは事実か、意見か?」
その“一呼吸”が、嘘の拡散を止め、社会を守る力になります。
■ 民主主義を守るために
立花氏の逮捕は、SNS時代の民主主義が抱える脆さを浮き彫りにしました。しかし同時に、政治・社会・市民が協力しながら健全な情報環境をつくっていく契機にもなり得ます。
嘘が拡散する社会でこそ、政治が誠実さと透明性を示し、市民と共に信頼を回復していくことが求められています。
私自身これからも、正確な情報発信と、丁寧な説明を心がけ、健全な民主主義の礎を守る努力を続けていきたいと思います。
今年、4月に開催された武蔵野政治塾【第35回】「政治とメディアリテラシー 〜デマに惑わされない社会へ〜」も是非ご覧ください。
【第35回(終了)】武蔵野政治塾「政治とメディアリテラシー 〜デマに惑わされない社会へ〜」